東京地方裁判所 昭和36年(ワ)54号 判決 1961年7月28日
原告 日特重車輌株式会社
被告 中野建設株式会社 外一名
主文
被告両名は、連帯して金二、一九一、九一八円とこれに対する昭和三六年一月一四日から支払ずみまで年六分の割合による金員を、原告に支払え。
訴訟費用は、被告両名の連帯負担とする。
この判決は、仮りに執行することができる。
事実
(申立)
一、原告
(1)、被告両名は、連帯して金二、一九一、九一八円とこれに対する昭和三六年一月一四日から支払ずみまで年六分の割合による金員を、原告に支払え。
(2)、訴訟費用は、被告等の負担とする。
(3)、仮執行の宣言を求める。
二、被告両名
請求棄却
(原告の請求原因)
一、原告は、ブルトーザ等建設機械の販売を目的とする会社、被告会社は、土木建築工事を目的とする会社、訴外千代田金属産業株式会社は、建設機械及び特殊鋼材の販売を目的とする会社である。
二、同訴外会社は、昭和三三年一二月一一日、被告会社に対し、NTK四型トラクター・シヨベル(リツパー及び排土板つき)一台(以下、「本物件」という。)を、次の約定で売り渡した。
(1)、代金五、四一四、八〇〇円
(2)、代金支払方法は、契約成立の時金五〇万円を支払い、残金は、昭和三四年一月から昭和三六年一月まで毎月末日限り金一九六、〇〇〇円(但し、第一回は、金二一〇、八〇〇円)あて支払う。
(3)、本物件の納期は、昭和三三年一二月一一日
(4)、被告会社において代金の支払を遅延し、または完了しないときは、訴外会社は、何らの通知催告を要しないで本件契約を解除して、本物件の返還を請求することができる。
三、訴外会社は、右の約旨に従つて、本物件の引渡を了した(但し、リツパーはついていない。)。
四、ところが、被告会社は、契約当日支払うべき金五〇万円の内金三〇万円を昭和三三年一二月二七日に支払つただけで、残金二〇万円の支払を怠つていたので、昭和三四年三月二〇日、訴外会社に対して残金の支払について次のとおり約束した。
(1)、昭和三四年三月二〇日金一五万円、
(2)、同年四月六日金四六、六〇〇円、
(3)、同月二五日五三、六〇〇円、
(4)、同年五月二五日金五一、三〇〇円、
(5)、同年六月二五日金五〇、九〇〇円、
(6)、同年七月二五日金五〇、四五〇円、
(7)、残金四、五〇八、〇〇〇円は、昭和三四年四月から昭和三五年一二月まで毎月八日限り金一九六、〇〇〇円あて月賦で支払う。
五、被告中野鑑憲は、昭和三四年四月二〇日頃、訴外会社に対して、被告会社の叙上売買契約上の債務について連帯保証の責に任ずる旨を約した。
六、訴外会社は、原告に対し、営業譲渡の一環として、昭和三五年四月三〇日、右売買契約上の売主の地位(代金債権を含む。)を譲渡し、以後、原告は、訴外会社の売主の地位を承継して残金の支払を受けて来た。
七、ところが、被告会社は、昭和三五年四月までに合計金二、一〇〇、八〇〇円を支払つたのみでその余の支払をしないので、原告は、昭和三五年六月二八日、被告会社に対し口頭で、本件売買契約を解除する旨の意思表示をすると共に、被告会社から本物件の返還を受けた。
八、しかし乍ら、本物件は、被告会社において使用した結果、損耗が甚しく、その現在の価額は、せいぜい金六〇八、〇〇〇円であるから、その売買価格金五、四一四、八〇〇円からリツパーを付しなかつたことによる値引額金二〇万円を控除した五、二一四、八〇〇円より残存価額金六〇八、〇〇〇円及び被告会社から支払を受けた金二、一〇〇、八〇〇円を差し引いた金二、五〇六、〇〇〇円は、被告会社の代金債務の不履行によつて原告の蒙つた損害である。
九、なお、原告は、本物件を被告会社から返還を受けるについて、金一九、二五〇円を要し、これも、被告会社の右債務不履行によつて生じた損害である。
一〇、よつて、原告は、被告両名に対し、右損害金合計金二、五二五、二五〇円の内金二、一九一、九一八円とこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払ずみまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(被告等の答弁)
一、請求原因第一ないし七項の事実は、認める。
二、同第八項中、本物件の現在額の点は、争う。リツパーを付しないことによる値引額は、金三〇万円ないし金五〇万円を相当とする。
三、同第九項中、損害額の点は、争う。
(被告等の仮定抗弁)
昭和三五年六月二八日頃、本物件の引きあげに来た原告会社の代理人は、被告会社の代表者に対し、本物件の引渡があれば、その余の損害金は請求しない旨を約したものである。
(原告の答弁)
右の仮定抗弁事実は、否認する。
(証拠)
一、原告
甲第一・二号証、第三号証の一・二、第四・五・六号証、第七号証の一・二提出、証人鈴木勉美の証言及び鑑定人奥田福松の鑑定の結果援用。
二、被告
被告中野鑑憲本人尋問の結果援用、甲第四・五・六号証の成立不知、その余の甲各号証の成立認。
理由
原告の請求原因第一ないし七項の事実は、当事者間に争いがない。
成立に争いのない甲第八号証、証人鈴木勉美の証言及び鑑定人奥田福松の鑑定の結果によれば、被告会社から、本物件の引き取り方を急ぎ、附属品のリツパーがなくても結構であるとの申出があつたので、リツパーは被告会社に引き渡さなかつたため、このリツパーの価額だけでは総代金額から差し引くべきものであるところ、その価額は、本件売買契約当時においても金二〇二、〇九五円であつたこと、また、本件売買契約解除当時における本物件の価額は、金六〇八、〇〇〇円を相当とすること、が認められ、右認定に反する証拠はない。
とすると、本件売買代金総額金五、四一四、八〇〇円から、契約解除当時における残存価額金六〇八、〇〇〇円及びリツパーの価額金二〇二、〇九五円並びに被告会社の今まで支払つた金二、一〇〇、八〇〇円の計金二、九一〇、八九五円を差し引いた合計金二、五〇三、九〇五円は、被告会社の代金債務の不履行によつて生じた通常の損害であると云わなければならない。
証人鈴木勉美の証言及び同証言によつて真正の成立の認められる甲第四号証によれば、原告は、被告会社から本物件を引きあげるため、弁護士に日当金五、〇〇〇円、トラクター・シヨベルの運転者に金二、二〇〇円、東京駅から本物件のあつた場所までの往復ハイヤー代金六、五五〇円、本物件の運送トラツク代金五、五〇〇円の計金一九、二五〇円を支出したことが認められるところ、右の内弁護士費用を除く金一四、二五〇円は、被告会社の本件債務不履行によつて通常生ずべき損害があると見るのが相当である。
被告等は、本物件の返還があれば、その余の損害金の請求をしないことを原告が約したと抗弁するところ、被告中野鑑憲本人尋問の結果によつては、その抗弁事実を肯認するに足りず、却つて、証人鈴木勉美の証言によれば、原告会社がそのような約束をした事実はないと、認められ、被告の抗弁は採用の限りではない。
とすると、被告等は、原告に対して、前記計金二、五一八、一五五円を支払うべき義務を負担しているものというべきところ、原告は、その内金二、一九一、九一八円とこれに対する本訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和三六年一月一四日から支払ずみまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求めているので、原告の本訴請求は、全部正当として認容すべきである。
よつて、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条第九三条を、仮執行の宣言について同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉永順作)